日米における履歴書と個人情報

アメリカのビザの話からちょっと逸れるけど、今日、会社の同僚から、「日本の履歴書には、顔写真を貼らなければいけないのか?」と訊かれた。なんらかのウェブサイトで読んだそうだ。一般的に知られている(?)ように、アメリカの履歴書には、年齢、性別、顔写真はまずない。そのため、日本人がアメリカの履歴書を見てびっくりするように、アメリカの人が日本の履歴書を見るとかなりびっくりする。多人種国家でジェンダーフリー、そして年功序列制度がないため、それらの項目が必要ではなく、むしろ雇用側が「平等」に審査することを主張するためだと思う。でも、書いちゃいけない、とも聞いたことがない。例えば、会社の顔を背負って顧客と接する役職の場合、容姿やスタイルが良いに越したことはないのではないか、と同僚から出てきた。むしろ、そういう役職に応募するのであれば、容姿やスタイルをセールスポイントとして、写真を貼ってもいいのではないかと。どこまで本気で言っているのかわからないけど、確かに一理あるかもしれない。

そこでふと思い出したのが、ちょうど1年前に、ジョンズ・ホプキンスの卒業生を招いて開かれた、ホプキンスでの就職セミナーでの話。ある卒業生曰く、(アメリカで就職活動をしているという前提で)、Google で自分の名前を検索してみなさい、と。このご時世、多くの Hiring Manager (日本で言う人事担当)は、インタビュー前の人物チェックとして、応募者の情報を、インターネットから集めるとのこと。実名が基本の facebook をはじめ、ブログや Twitter、大学卒業間もなければ、所属研究室での情報など、あらゆることが簡単に手に入ると。だから、見られたら困るようなことは、整理しておくように、というのがアドバイスだった。例えば、「見られたら困る」には、友達が勝手に facebook にアップロードした、酔っぱらったときの恥ずかしい写真なども入る。現に、そういうオンライン上の評判を管理・モニタリングするサービス(例えば、名前そのままの Reputation.com とか)まで出ている。

こうなってくると、ネットでは匿名が多い日本の場合、応募者を検索しても、なかなか情報は得られない。逆に、ネットでも実名が基本のアメリカの方が、履歴書に顔写真なんか貼ってなくても、インターネットから色々な情報を入手することが可能になる。年齢はわからずとも、少なくとも性別とどんな人種でどんな容姿かはわかる。もちろん(建前上は)そういう情報で応募者を取捨選択・合否決定することはないと言っているけれど、いまの時代のアメリカでの就職活動では、日本の履歴書以上に個人情報を提供する可能性があるように感じる。

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H-1B に関して

前回の続きで、今回は H-1B という就労ビザに関してです。

H-1B は、「特殊技能職」用の一時就労ビザです。就労許可が認められる特定分野において、学士号以上の学位を取得していることが条件です。また、H-1B は雇用主を通してしか発行されないため、ビザを申請するためには特定の雇用先が決まっている必要がありますし、転職等で雇用主が変われば、新しい雇用主を通して再度 H-1B に申請する必要があります。一般的に3年間のビザが発行され、最長6年までとなっています。

H-1B で厄介なことは、年間発行上限(cap)数が設定されていることです。2011年10月現在において、年間(会計年度で決められている関係上、毎年10月1日〜翌年9月30日まで)の新規 H-1B 発給数は、全体で65,000と定められていますが、修士号以上の学位取得者には、さらに20,000件余分に認可されます(つまり、修士号以上の学位を持っていれば、一般の65,000件の方か、もう一方の20,000件のどちらかに応募可能)。

この上限数の免除対象となるのは、大学等の高等教育機関や非営利の研究機関などに勤務する場合です。例えば、ポスドクや大学職員として高等教育機関に勤務される場合、この上限数や発行時期は全く関係ありません。また、二度目以降の H-1B 申請の場合も免除されますが、一度目に上限数制約下での H-1B 発行に限ります。例えば、大学勤務で初めての H-1B を取得したのち、一般企業に H-1B で転職する場合は、二度目の申請になりますが、一度目が上限制約下ではないため、転職する際には、上限数が課される H-1B 申請になります。

先に触れた通り、H-1B は会計年度と関係があるため、上限数のもとで新しく発給された H-1B では、その年の10月1日以降から勤務可能となります。H-1B の申請受け付けは、その年の会計年度が始まる6ヶ月前、つまり4月1日(もしくは、4月最初の営業日)から応募可能です。10月1日よりも前に承認されたとしても、H-1B のビザで勤務できるのは10月1日以降です。過去には、受け付け開始日の4月1日の時点で、発給数よりも多くの申請書を受け取った年があり、その場合は抽選で選ばれました。ジョブオファーをもらっていても、ビザが下りずに働けなかった人もいたそうです。ですが、リーマン・ショック後は不景気のため雇用が減少しているため、なかなか上限数にまで達していないようです。参考までに、近年の状況は以下の通りです。
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2008年度:2007年4月2日の受け付け開始日に、発給数の倍以上の約150,000通の申請書を受け取る。その後2日間は申請書を受け付け、それ以降は2008年度の応募は締め切り。
2009年度:最初の1週間で規定数に到達し、その後は受け付けしないと、2008年4月8日に発表。
(2008年9月にリーマン・ブラザーズが破綻)
2010年度:2009年12月22日に、ようやく規定数に到達。
2011年度:前年よりさらに遅く、2011年1月26日に規定数に到達。
2012年度:2011年4月15日の時点で23,500件のみ受理。いま現在の状況は、こちらで確認可能。

確実に H-1B を取るためには、少なくとも半年以上前に雇用を確保しているのが望ましいのですが、近年の不況が、ビザの面から見ると良い方向に影響しています(そもそも、ジョブオファーがもらえないと、就労ビザの申請もできませんが。。)。アメリカ国外に住んでいる人が初めて企業用の H-1B を取得しようとすると、景気の良かった時代には非常に困難だったのですが、近年では10月1日以降でも申請可能なので、敷居は低くなっていると思います。もちろん、これからどのようになるかはわかりませんが。

次回は、OPT と H-1B 申請で実際に体験したことをまとめてみます。

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F-1 ビザと OPT に関して

アメリカの大学・大学院に進学後、現地で就職するとなると、永住権・市民権を持たない場合には、ビザが問題になってきます。最近1年弱のあいだに、学生ビザ(F-1)から F-1 + OPT(就労許可)、そして 就労ビザ(H-1B)と変わったので、これから数回に渡って、これらの事柄をまとめてみます。

はじめに断っておきますが、これから書くことは、すべて私個人の知識・体験がもとになっています。出来るだけ、信頼のおける文献を当たってはいますが、必ずしも正確性を保証する内容ではありません。そのため、最終的には専門の方(大学の留学生課の専門資格を持った職員や移民弁護士)などに確認して下さい。


● ビザ
ビザとは査証のことで、査証とは、「外国人の入国に必要な入国許可申請証明の一部」であり、「入国許可・在留資格とは別のもの」です(Wikipedia より)。


● 学生ビザ(F-1)
一般的な日本人(アメリカ国籍や永住権を持たない人)の場合、アメリカの大学や大学院に来る際に、学生としてのビザが必要になります。いくつか種類がありますが、一般的には、F-1 ビザを取得することが多いはずです。F-1 ビザ申請のためには、受け入れ校からの書類(I-20)が必要になります。なお、I-20 は Travel Signature と呼ばれる、所属大学からのサインが必要で、アメリカ国外に出て再度戻る際には、少なくとも過去1年以内に取得したサインでないと、再入国が厳しくなります。これをうっかり忘れてアメリカ国外に行くことは、結構犯しがちなミスです(その際には、所属大学の留学生課に連絡して下さい)。

F-1 ビザ保持者は、フルタイムでの滞在のみが許可されています。学業が主目的であるため、基本的に労働は認められていませんが、例外として、大学キャンパス内での仕事であれば、週に20時間まで認められています。学部生であれば、キャンパス内のブックストアやカフェテリア、図書館や留学生課での仕事などがあるでしょう。大学院生であれば、TA(Teaching Assistant)や RA(Research Assistant)もパートタイムとしての仕事に含まれます。RA の場合、実質労働時間が20時間を越えることは、特に卒業間近になれば一般的ですが、それでも形式上は20時間以内のパートタイム労働として区分されます。

在学中に、キャンパス外で仕事をしたい場合、CPT(Curricular Practical Training)という特別な許可申請が必要になります。専攻に関連する職務内容であったり、CPT を通して卒業単位を得られること(PhD 課程の場合は例外)など、いくつかの制約が課されます。また、フルタイムで CPT をすると、その期間分が、卒業後に申請可能な OPT から差し引かるため注意が必要です。なお、CPT は所属大学の留学生課を通して許可されるはずですが、私自身は CPT をしていないため、詳しくはわかりません。


● OPT(Optional Practical Training)
CPT は在学中のものでしたが、OPT は卒業後に申請できる労働許可です。一般的に、大学・大学院卒業後、すぐに就労ビザや永住権を得られることは非常に稀なため、一時的な労働許可をもらってから、就労ビザを取得することが多いと思います。その橋渡しとなるのが OPT です。OPT は、あくまで特別労働許可であって、ビザではありません。そのため、OPT 期間内であれば、卒業後であっても F-1 ビザのステータスを維持する必要があります。

2008年春に、OPT の内容に大きな変更がありました。私が申請した2010年10月の時点では、下記のようなことが特に注意する点です。ただし、これらは思いつく事柄であって、これがすべての条件・注意事項というわけではありません。

  1. 基本的に最長12ヶ月間まで。ただし、特別な要件を満たした場合、最長29ヶ月まで更新可
    最長29ヶ月まで延長するためには、2つの条件があります。1つ目は、大学での専攻が STEM (Science, Technology, Engineering, and Math) 分野に当てはまることです。2つ目は、雇用先が E-Verify プログラムに加入していることです。E-Verify とは、アメリカ政府が進めている、オンライン上で管理する移民情報システムのことです。大企業ではまず例外なく導入されていると思いますが、中小企業では加入していないところもあるため、その場合は STEM 分野専攻であっても OPT の延長は認められません。
  2. 卒業90日前から60日以内の期間のみ申請可
    学部課程や修士課程の場合、卒業時期が明確であることが一般的であるのに対して、PhD 課程の場合、いつ本当に卒業できるかというのは、最後の最後までわからないケースが多いと思います。大学やプログラムによってルールが異なるでしょうが、博士論文を最終的に提出する日が卒業日と定めているような場合、OPT 申請をいつすれば良いのか迷うかもしれません。
  3. CPT でフルタイムとして働いていた場合、その期間分が差し引かれる
    これは先に述べた通りです。そのため、在学中に12ヶ月間、フルタイムとして CPT で働いてしまうと、OPT の分がなくなってしまいます。なお、その際、項目1で述べた2つの条件を満たした場合、29ヶ月に延長できるかはわかりませんので、各自調べてください。
    【追記】shima さんから貴重なコメントを頂いたので、そちらも参考にしてみて下さい。
  4. 申請から許可までは、最長で90日掛かる
    アメリカでも大企業であれば、日本のように入社時期があらかじめ大まかに定められている場合があるかもしれませんが、ジョブオファーが出たらなるべく早く働いて欲しい、というケースも多いのではと思います。その際に OPT が出ていれば良いのですが、OPT がいつ出るかわからない状況で就業開始日までに間に合わない場合、最悪の場合、ジョブオファーが取り消し(厳密に言うと、OPT が取得できることが前提のジョブオファーになる場合が多いため、取り消しではないかもしれませんが)になる可能性も否定できません。OPT の申請は、時期によって混み具合が異なります。卒業シーズンと重なると、審査に要する期間も長いのが一般的ですし、90日以上掛かることも稀ではありません。
  5. OPT の最初の12ヶ月のあいだに、無職の期間は最大90日まで認められる
    裏を返せば、OPT 交付日から90日より長い期間、就業できていない状況だと、アメリカを出国しなければなりません。これは、2008年春以前にはなかったルールのようです。
  6. OPT は F-1 の延長なので、住所の変更や雇用先情報などは、所属していた大学の留学生課に逐次報告する必要がある
    これは OPT を受け取った際に、所属している/していた大学の留学生課より言われるはずです。また、OPT の最中も F-1 ビザなので、1年以内にもらった Travel Signature が必要になります。

次回は、H-1B のことに関して説明します。

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