Piled Higher and Deeper (PhD)

11/2(水)の話だけど,アメリカの大学院生の間では有名なマンガ,PhD Comics の作者 Jorge Cham (以下,ホーヘイ)がホプキンスにやって来た.毎月院生向けに発行される The Grad News に載っているので,結構毎月楽しみにしている.

今までどんな人が作者なのか知らなかったけど,来たのは若い20代後半のイケメン青年だった.そして彼自身はスタンフォードの機械工学科で PhD を取っている.冒頭で流された研究紹介で登場した Sprawl Robot は結構有名なロボットで,まさか彼がこの研究に携わっていたとはかなり予想外だった.ちなみに当時のホーヘイ(一番右)はちょっと20代前半には見えない... そしてスタンフォードの機械工学科といえば,自分の指導教官(以下,アリソン.名前のとおり女性です.)も同専攻出身.なんで彼女のオフィスドアに PhD Comics の Motivation Graph が貼ってあるのか,ようやく一つ目の謎が解決した.

ホーヘイがスタンフォードの大学院に入学した1997年から書き始めたそうで,当初は身内のみに配布していたのがどんどん広まり,今ではアメリカ以外でも紹介されてるそうだ.月240万ページビューとのこと.そもそもの動機は,世の中に色々な人を題材にしたドラマやマンガがあるけど,大学院生を題材にしたものがほとんどなかったから,とのこと.確かに院生の日常はルーチンワークの繰り返しだから,あまり面白くならない.もう一つの理由は,ストレスが溜まる大学院生活を,もっと気張らずにリラックスして,The Power of Procrastination を取り入れながらやっていこう,というメッセージが込められている.procrastination を辞書で調べると,『ぐずぐずすること,遅延』などといった訳が出てくる.彼は procrastination は laziness (怠惰,不精)とは違うと主張していた.The American Heritage Dictionary では,

To postpone or delay needlessly.
と書かれていて,needlessly (不必要に)というところを彼は強調して笑いを誘っていた.
●参考:Procrastination Definition

この背景に,アメリカのトップスクールでの熾烈な競争がある.学部生は良い成績を取って良い大学院に進むために競争がすごいのは知っていた.ホプキンスでも,プリメド(premed)と呼ばれる生物や化学,心理学などを専攻し,主にメディカルスクールを目指す学部生の競争は凄まじいそうだ.大学院でも優秀な学生が集まる UC Berkeley などでは,次のような調査結果がある.

A recent survey by U.C. Berkeley found that 95% of all graduate students feel overwhelmed, and over 67% have felt seriously depressed at some point in their careers.
出典:PhD Comics
意訳すると,95%の院生は多くの宿題や熾烈な競争に凹んだ経験があり,67%はかなり精神的に落ち込んだことがある,とのこと.そういう現状を,この PhD Comics を読んでもらって少しでも改善したい,という想いがあると言っていた.

ホーヘイ自身が大学院で6年間過ごして博士号も取っているので,学校や分野によって違えはあれど,多くの大学院生の共感を呼び,これだけの人気があるのだと思う.約1時間のトークショーは最初から最後まで笑いが絶えずとても楽しかった.そして最後に設けられた質問コーナーで,ある学生から「このマンガに登場する Cecilia という女の子が身近にいる誰かに似ている気がするんだけど気のせいか?」という質問が出た.というのも,特に初期の頃のセシリア,自分の指導教官のアリソンにかなり似ている.去年初めて彼女のオフィスを訪れたとき,オフィスのドアに貼ってあった PhD Comics のセシリアを見て,アリソンが自分で描いた自画像なのかと思ったほど.彼の回答は,アリソンからちょっとはヒントを得ているけど基本的には別人だとのこと.アリソンとホーヘイは同じ研究室仲間だったそうだ.なんでセシリアとアリソンが似ているのか,長い間疑問だった二つ目の謎がようやく解けた.

最後に付け足すと,彼はスタンフォード卒業後プロの漫画家としてやっているのかと思ったら,いま現在カルテックの有名なロボティクス研究室でポスドクとして働きながら PhD Comics を描き続けている.こういうタイプの研究者は日本ではなかなかお目に掛かれない気がする.

【追記】

  1. PhD Comics でキャンパス巡りトークもマンガにして描かれている.今回のホームウッドキャンパスの内容は割愛されているけど,11/4(金)のメディカルキャンパスでの感想は描かれている...
    ↑勘違いでした.ダブルセットで載りました
  2. PhD Comics 読者からもらう4種類のメールを説明する動画(Quick Time).

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うちにも来てました!学内新聞に記事が載ってましたよ。(そういえば前日にE-mailが出回っていたのを思い出した・・)
作者とアドバイザーが同じラボだったなんて驚きですね。
ところでこの冬日本に帰りますか?

そうそう,知らせようかと思ったら既に終わってたの... 彼はジョージアテックで学部卒業したって知ってた?

結局先週ギリギリでチケット買いました.でも,旅行代理店からまったく連絡がないのはいいんだろうか.夏以上に慌しそうなんで,事前に計画を練っておかないと.日本で会えるといいね,って帰るんだよね?

まじで!?テック卒業してんの?
・・・・
今新聞を確認したら、そう書いてある。何だつながりあったんだね~。

投票していただけたでしょうか?投票結果で帰るか決定します。でも、すでに帰るほうに気持ちが動いている。ぜひ、日本で会いましょう!

はじめまして。
ミクシィの足あとからたどってきました :)

ホプキンスはジョージタウン大学のvisiting research scholarだったときによく行きました。研究の分野も少し関連しているので、ジョージタウンのボスだったKevin Clearyももしかしたら御存知かもしれませんね。

PhD ComicsのJorge Chamはうち(カーネギーメロン大学)にはまだまだ来てくれそうにありませんが、Ceciliaネタには食いついてしまいます。実は彼女(台湾系アメリカ人)がCeciliaそっくりなんです。見た目もそうだけど、こういうところ
http://www.phdcomics.com/comics/archive.php?comicid=348
もそっくりです。学部の時がcomputer scienceの専攻なので、隠れgeekっぽいところもぴったりなんです。今度、
http://www.cafepress.com/phd01.2687976
を買って着せようと思います(笑)。

いきなり書き込んで、長々と書いてしまいました。ごめんなさい。最後に質問ですが、Ceciliaのブログ
http://www.phdcomics.com/blog.php
をアリソン先生が書いているというオチはないんですかね?

DAIGO さん,はじめまして!

Prof. Cleary ってちょっと調べてみたらほぼ同分野だし,ウチのロボティクス関係の研究室と共同研究もしてるみたいですね... 恥ずかしながら初めて知りました.WashCAS に参加すれば会えるかもしれません.

真の Cecilia のモデルが登場でしょうか?(笑) CMU は愛読者が多そうな気がしますが,残念ながら回らないんですね.次回ツアーがあれば,みんなでメール攻撃とか効果的かもしれませんね.そしてその彼女にTシャツを着て参加してもらうとか(笑)

今日アドバイザーとミーティングがあったんですが,最後に「何か他に話し合うことある?」と聞かれました.Cecilia ブログの真偽を問い合わせるべきでしたね.次回こそは...

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