January 2006 Archives

今日から春セメスターがスタート。学部生が一斉に戻ってきたので、4月の日本の大学みたいに一気に人口が増えた。Quals は先週月曜、Intersession も先週金曜に終わったので、週末は日本人院生でパーティーを楽しんでちょっと一息。また今日から授業に研究に頑張らなければ。

今セメは少し授業を抑え目にして、その分研究に力を入れたいと思っている。先セメに線形システムを担当した大物教授が今期で最後の教鞭を執るので、その非線形システムを受講。非線形システム自体は非常に込み入った難解な学問だけど、前回適応システムを受講したおかげで少し非線形システムのことを習っているので、ちょっとだけアドバンテージがある。あともう一科目は学部生向けの確率・統計。もう1ランク上の統計学のクラスがあるけど、去年最初の1週間だけ出てみたら記号が全然わからなかった。今日、確率・統計のシラバスを聞いた感じだと、なんだか日本の高校レベルの話をしていたけど、まぁ大学入試以来まったく手をつけていない分野なのでリハビリも兼ねて。これだと少し時間的に余裕があるから、今後の研究成果発表を考えて、リサーチ・ライティングかプレゼンテーション・スキルのクラスを取ろうと思って指導教官に相談してみたら、「そういうのは実際に自分の研究で実践するのが一番だし、それを教えるのが私の仕事」と、なんとも励みになる返事を頂いてしまった。でもせっかく余裕がありそうなので、代わりに ESL のスピーキングのクラスを受ける予定。夜間週2なので、ちょっとした気分転換にもいいかもしれない。パッと見、ポスドクばっかりで院生は全然いなかったけど。

ところで、去年は2/25にやった新入生向けの Grad Visit Day というイベントを、今年は今週金曜に開くそうだ。青田買い作戦に出たのか?と思ったら、(多分)昨年までは1/15が願書出願〆切だったのが、今回は12/15〆切に変わっていた。やっぱり良い学生を早く確保したいから早めになったのかな?自分が出願のときに12/15〆切だったら、間違いなく撃沈してた気がする。。。

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今年は1/9~28までが Intersession と呼ばれる3週間集中講座(もしくは研究に集中する)期間で、今回受けていた Haptic Systems のファイナルプロジェクトを Qualifier 直後の火曜から始めたけど、なんとか今朝のデモ公開までに終わらせることができた。今週末は束の間の休息、来週月曜から春セメスター開始。

せっかくなので、23(月)に受けた Qualifying Exam(通称 Qualifier とか Quals)についてご説明。まず、そもそも Qualifying Exam とは何かというと、PhD 課程(博士課程)の学生としてやっていくのに相応しいかを見極める試験。アメリカの場合、多少名前は違えどほぼどの学校・専攻でもあるのが一般的。修士を取るためにも Quals を課すところもあるそうだし、ホプキンスの Biomedical Engineering PhD 課程みたいに Quals がないところもあるけど、まぁ例外的な部類だと思う。試験の時期・形式・難易度は学校・専攻で全然変わってくる思う。だから大学院を選ぶとき、『生存率』(学位取得者数÷入学者数)を考慮することも大事かもしれない。渡米前、日米教育委員会で開かれた招待者講演で、元東大学長の有馬さんは修士号を『残念賞のマスター』と仰っていた。PhD 課程に入学しても Quals に落ちた場合、修士号だけ与えられて追い出されるからだそうだ。

ジョンズ・ホプキンスの機械工学専攻の場合、入学から3セメスター後の冬休みに受けるのが一般的。同専攻内でさらに3つの分野(流体力学・材料力学・ロボット工学)に分かれて実施されるので、正確には自分のロボティクスしかわからない(聞いた限りでは概ね同形式みたい)。試験は1時間の口頭試問のみ。ロボティクスには4名の教授がいて、昨年は4名同席したらしいけど、今年は3名+他分野の教授1名の構成。他の学校の人の話を聞くと1時間というのは結構短い方かもしれないけど、審査官1名あたりの持ち時間が15~20分なので、一度行き詰るとほとんど答えないうちに終了してしまうという危険性もある。

ロボティクス分野の場合、calculus, linear algebra, differential equations, linear systems, physics, statics, dynamical systems, vibrations, and strength of materials as appropriate for the conduct of their research に精通していれば合格できると書かれているけど、主に線形代数・動力学・ロボット工学・運動学がメインになる。問題を与えられて説明しながら解く場合もあるけど、筆記試験ではなく口頭試問のため、基礎的な概念をしっかりと理解しているか、自分なりに説明できるかが試される。今回自分が受けた質問は、



● 自分のアドバイザー(主に動力学メイン)
2つの滑車にベルトが掛けられ、一方の滑車はあるトルクを出力するモーターに、もう一方にはロボットアームのようなものが取り付けられている。2つの滑車は異なる慣性モーメントを持ち、滑車を結ぶベルト間にはバネが挟まれている。このときのシステムの自由度や運動方程式、モーターから正弦波のトルクを入力したときの系の振動の様子などを答える。打ち上げでみんなと話したら、完答できた人は誰もいなかった。

● Advanced Systems Modeling 担当の教授
対称行列の固有値はすべて実数になること、その固有値が互いに異なる場合は固有ベクトルは直交すること、その固有ベクトルからなる行列は回転行列となることを証明。それを使って、マス-ばねシステムの運動方程式(M \ddot{X} + K X = 0)の解 X(t) を求める問題(M,K は行列)。座標変換のヒントがちょこちょこ出された。大半は授業でやって、試験日前日復習した箇所で助かった。ちなみに最終的な答えは M,K がスカラーのときと見た目が同じ解が得られる。すなわち、X(t) = X(0) * cos(Ωt) + Ω^{-1} * V(0) * sin(Ωt) となる。行列 Ω は長いので省略。

● Adaptive Systems 担当の教授
上の問題で座標変換をするとき、M>0、K≧0 を仮定したけど、K が準正定行列でないときはどうするか?、また K が対称行列にならないマス-ばねシステムの例を図示せよ、との追加質問。これはメインじゃなかったし1分考えてわからなかったので即白旗。どうやるんだろ?メインの問題は、そもそも Adaptive Systems とは何かに始まり、微分方程式の解の存在性・一意性の十分条件、必要十分条件(Lipschitz Continuity)、stability と attractivity の厳密な定義、persistent excitation やリアプノフ関数に関してなど、Adaptive Systems の授業導入部分中心。期末試験でたくさん書いて完璧な図も描いたのに、数式が厳密性に欠けるとのことで、20点中たったの2点しかもらえなかった stability と attractivity の定義を自信を持って説明できたのでちょっと嬉しかった。



最初のアドバイザーからの問題で少し詰まったけど、それ以降は大きな問題もなく順調に切り抜けられたのが良かった。4人目の他分野の教授が一般的な常識問題みたいのを出すかと思ったけど、ずっと座ってただけで一言も話さなかった。ただの監視係だったのかな。Introduction to Robotics 担当教授が同席してなかったので、一番メインのはずのロボット工学はほとんど出なかったけど、あの教授はなぜか群論(Group Theory)に関する問題が好きらしい。

さて、多分一番みなさんが興味があるのは、「一体この試験をパスするのはどれくらい難しいのか?」だと思う。これも学校・専攻によって大きく違うと思う。情け容赦なしに結構ばっさり切るところもあると聞く。ウチのロボティクス分野の場合、審査は結構甘いのでは、という印象を受けた。ドロップアウトしたという話は滅多に聞かないし、大抵みんな一発で通る(一般的に2回チャンスがあるそうだ)。専攻の規模が小さい(同級生は約15人なので、ロボティクスだと5人程度)のもこの甘さに関係あるのかもしれない。でもこの試験準備をする過程で、あんなに頑張って勉強したことをすっかり忘れていたのに気付いたり、見直すことで新たな発見があったりして基礎固めになるという点で、しっかり復習して良かったなと思う。あと、しっかりとした手応えを自分で感じ取れたことが嬉しかった(ラボに戻ったら、結果発表前なのに you look happy と言われた)。次の関門試験は、約1年後にある GBO(Graduate Board Oral Exam)というコースワークと研究に関する2時間の口頭試問(一般的には Comprehensive Exam、通称コンプと呼ぶと思う)。まだまだ学位までの道のりは長い。

● 関連
MIT EECS の Qualifying Exam ←さすが MIT、成績の条件が相当厳しい。

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Qualifying Exam、問題なくパスできました! 試験の詳細はまたあとで書くことにして、月曜にして打ち上がってきます。 と言っても、延期してもらっていた、いま取ってる授業の3週間プロジェクトを 明朝から始めて金曜までに仕上げる必要があるけど。。。
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メリーランド州の免許を取って車を購入したのが約1年前。自動車保険に加入するとき、免許取得後どれくらい経過したのかが結構大きな査定ポイントになるようだ。日本での運転歴を考慮してもらうという方法も聞いたけど、日本にいたときは実家で車を所有していなかったので、証明を頼める保険会社もなく、仕方なく『若葉マーク』ドライバー価格で去年は申し込んだ。かなり最低限度の補償にしたけど、それでも約$1,000/半年。かなり痛かった。ようやく1年が経過して今回は安くなるだろうと期待していたら、なんと来た請求書の金額がまったく変わっていない。いま契約してる Geico がそういう方針なのかと思って他社にも問い合わせてみたけど、やっぱり他もみんな『若葉マーク』価格。結局 Geico の現在価格が一番安かった。


そんなときふと思い出したのが AAA の担当者が言っていた「違う区域なら安いんだけど」という言葉。ためしに Geico で住所変更でどれくらい金額が変わるのかオンライン上で試してみた。その結果、なんと6ヶ月で$335も違う!! いまの住所は大学キャンパス東側(郵便番号でいうと 21218)、試してみたのがキャンパス北側(21210)。月$50家賃の高い北側のアパートに住んでもトータルでは安くなるので、住む場所を決めるときは自動車保険も考慮する必要が大いにある。アメリカはブロックでかなり雰囲気が変わってくるから郵便番号で保険金額が変わるとは聞いていたけど、まさか学校のすぐ東と北でこんなに違うとは思わなかった。さすが犯罪率の高いボルチモア、恐るべし。。。
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これまでにも何回か書いてるけど、アメリカの大学院で PhD (博士号)を取るためにはいくつかの関門があって、その一つに Qualifying Exam とか Preliminary Exam とか呼ばれる関門試験がたいていある。ジョンズ・ホプキンスでは DQE (Department Qualifier Examination) と呼ぶそうで、自分の所属専攻では入学してから3セメスター後の冬休み(1月下旬)に受けるのが一般的。ところが年が明けても正確な日程が決まらず、つい昨日1月23日にあると正式発表された。2週間を切っての発表、しかも翌週の1/30頃を予想していたのでちょっと想定外。今週月曜から始まった3週間集中のクラスの宿題〆切を1/23以降に延期してもらったりしないと辛い。時差ぼけがまだ治らないなんて言ってる場合じゃなくなってきた。

今回、アメリカ入国時には税関で何も申告しなかったので、牛加工食品を没収されずに済んだ。持ち帰ったうちの一つ、グリコ DONBURI 亭の牛丼を食べようとしたら受験川柳カードが入っているとのこと。当たりの場合は合格祈願図書カードプレゼント。ちょっと期待しつつ出てきたのが左のカード。…DQE に受験票はないと思うけど、まぁ頑張ります。

それにしても、たいていこういう忙しいときは何か起きる。今回はリビングにあるファン付き照明のON/OFFスイッチが壊れた。引っ張るひもが伸びきった状態。自分で直そうとしたけど途中で断念。天井が高いし真っ暗で見えない。かなり小さい六角レンチが必要っぽい。明日修理を頼んでも多分金曜日でやってくれなさそうだから、そうなると来週月曜はマーティン・ルーサー・キングの日で祝日なので、土日月も真っ暗。。。

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喪中につき、新年の挨拶は控えさせて頂きます。

期間は短くて残念だったけど、やっぱりお正月を過ごすのは日本が一番!と感じた一時帰国。夏に会えなかった友人や11月に生まれた甥っ子に会ったり、日本のお正月の味を満喫したり、新年早々車を側溝に落としたり、充実した楽しい時間を過ごせた。そして6日夜からは、日米の留学準備講座で一緒だった友人がボルチモアを訪ねてきてくれた。あまり大したおもてなしもできなくて申し訳なかったけど、自分は美味しいレストランを開拓できたし、彼は結構ボルチモアが気に入ってくれたみたいで良かった。

あまり時間がなかったけど、今回の帰国で手にしてみた本をご紹介。
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Life On The Tenure Track: Lessons From The First Year
Life On The Tenure Track: Lessons From The First YearJames M. Lang

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大学教官になる選択肢はあまり考えていないけど、アメリカの教育システムに興味があるのと、出版社が自分のアパートと同じブロック内にあるという偶然に、日本に帰るときにちょっとだけ読んでみた。著者は現在 Assistant Professor で、新米教授が直面するであろう問題や共通の悩み、そしてときに感じる高揚感などを書き綴っている。まだ数十ページしか読んでないけど、大学教授の内面や実情がわかるという意味で、面白い本だと思う。


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素人のように考え、玄人として実行する―問題解決のメタ技術金出 武雄

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star学生の時に読みたかった...
star若手研究者は必読書です・・・。
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CMU(カーネギー・メロン大学)の前ロボット研究所所長、金出武雄(かなで・たけお)先生の本。以前、日記の感想で King さんに紹介してもらった。ご自身の掲げるモットー『素人発想、玄人実行』の説明に始まり、物事の考え方や人生訓、英語の勉強法などにも触れられていて、軽快な文章で非常に面白かった。主旨は違うと思うけど、『ただ漫然と人と話すのでは意味はない。』(P.184) という文を読んだとき、今回の帰国で CMU の shima さんとジョージア工科大の King さんと一緒に会う機会があったのに、何もプランを考えずに漫然と話を繰り広げた自分がちょっと恥ずかしくなった。


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理系白書
理系白書毎日新聞科学環境部

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star力作だと思う、多くの示唆に富んだ内容である。
star学者(若手)の感想
star客観的なデータに基づく説得力、現状認識はこれでOK。

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結構前から話題になってるけど、毎日新聞科学面に連載された同タイトルの企画をもとに加筆・再構成された本。文系優位の日本社会における『理系人』のあり方を模索している。帯に書かれた「理系は報われているか。」というキャッチフレーズが響く。全体的にかなり理系の視点で書かれているので、こういうのを理系の人が読んで納得するのではなく、逆に文系の人に読んでもらいたい気がする。

● 関連サイト
MSN-Mainichi INTERACTIVE 理系白書
理系白書ブログ

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「異脳」流出―独創性を殺す日本というシステム
「異脳」流出―独創性を殺す日本というシステム岸 宣仁

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star日本国内の研究者にも読んでいただきたい1冊
star研究者を志す者としては日本の研究環境に考えさせられます
star海外で突出した研究活動を行う日本人研究者をインタビュー

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青色発光ダイオードの中村修二氏に始まり、海外に研究拠点を求めた7人の研究者を紹介している本。恥ずかしながら3人しか知らなかった。まだぱらぱらとめくった程度だけど、非常に面白そう。最後の7章に登場するスタンフォード大の雨宮健(あめみや・たけし)教授は、『ノーベル経済学賞に最も近づいた日本人』と紹介されていて、ジョンズ・ホプキンスで Ph.D. を取ったそうだ。医学で非常に有名なホプキンスだけど、古くは数学や経済学でも非常に有名で、ノーベル賞受賞者もかなりの数に上る。
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ところでウェブサイトを公開してて良かったなぁと思うのは、新たな出会いにめぐり合えたとき。前回のエントリーでシカゴで足止めを食らったと書いたら、先日 mixi で知り合った Daigo さんから、翌日にシカゴ経由で日本に帰るので時間が合えば会いましょう、とのご連絡を頂いた。結局コーヒー一杯程度の時間しかなかったけど、実際にお会いできて話ができて嬉しかった。こういうのはまさに現代ならでは。今年もいろいろな新しい出会いに恵まれればと思うので、コメントやつっこみ等、よろしくお願いします。

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