JHU ME DQE

今年は1/9~28までが Intersession と呼ばれる3週間集中講座(もしくは研究に集中する)期間で、今回受けていた Haptic Systems のファイナルプロジェクトを Qualifier 直後の火曜から始めたけど、なんとか今朝のデモ公開までに終わらせることができた。今週末は束の間の休息、来週月曜から春セメスター開始。

せっかくなので、23(月)に受けた Qualifying Exam(通称 Qualifier とか Quals)についてご説明。まず、そもそも Qualifying Exam とは何かというと、PhD 課程(博士課程)の学生としてやっていくのに相応しいかを見極める試験。アメリカの場合、多少名前は違えどほぼどの学校・専攻でもあるのが一般的。修士を取るためにも Quals を課すところもあるそうだし、ホプキンスの Biomedical Engineering PhD 課程みたいに Quals がないところもあるけど、まぁ例外的な部類だと思う。試験の時期・形式・難易度は学校・専攻で全然変わってくる思う。だから大学院を選ぶとき、『生存率』(学位取得者数÷入学者数)を考慮することも大事かもしれない。渡米前、日米教育委員会で開かれた招待者講演で、元東大学長の有馬さんは修士号を『残念賞のマスター』と仰っていた。PhD 課程に入学しても Quals に落ちた場合、修士号だけ与えられて追い出されるからだそうだ。

ジョンズ・ホプキンスの機械工学専攻の場合、入学から3セメスター後の冬休みに受けるのが一般的。同専攻内でさらに3つの分野(流体力学・材料力学・ロボット工学)に分かれて実施されるので、正確には自分のロボティクスしかわからない(聞いた限りでは概ね同形式みたい)。試験は1時間の口頭試問のみ。ロボティクスには4名の教授がいて、昨年は4名同席したらしいけど、今年は3名+他分野の教授1名の構成。他の学校の人の話を聞くと1時間というのは結構短い方かもしれないけど、審査官1名あたりの持ち時間が15~20分なので、一度行き詰るとほとんど答えないうちに終了してしまうという危険性もある。

ロボティクス分野の場合、calculus, linear algebra, differential equations, linear systems, physics, statics, dynamical systems, vibrations, and strength of materials as appropriate for the conduct of their research に精通していれば合格できると書かれているけど、主に線形代数・動力学・ロボット工学・運動学がメインになる。問題を与えられて説明しながら解く場合もあるけど、筆記試験ではなく口頭試問のため、基礎的な概念をしっかりと理解しているか、自分なりに説明できるかが試される。今回自分が受けた質問は、



● 自分のアドバイザー(主に動力学メイン)
2つの滑車にベルトが掛けられ、一方の滑車はあるトルクを出力するモーターに、もう一方にはロボットアームのようなものが取り付けられている。2つの滑車は異なる慣性モーメントを持ち、滑車を結ぶベルト間にはバネが挟まれている。このときのシステムの自由度や運動方程式、モーターから正弦波のトルクを入力したときの系の振動の様子などを答える。打ち上げでみんなと話したら、完答できた人は誰もいなかった。

● Advanced Systems Modeling 担当の教授
対称行列の固有値はすべて実数になること、その固有値が互いに異なる場合は固有ベクトルは直交すること、その固有ベクトルからなる行列は回転行列となることを証明。それを使って、マス-ばねシステムの運動方程式(M \ddot{X} + K X = 0)の解 X(t) を求める問題(M,K は行列)。座標変換のヒントがちょこちょこ出された。大半は授業でやって、試験日前日復習した箇所で助かった。ちなみに最終的な答えは M,K がスカラーのときと見た目が同じ解が得られる。すなわち、X(t) = X(0) * cos(Ωt) + Ω^{-1} * V(0) * sin(Ωt) となる。行列 Ω は長いので省略。

● Adaptive Systems 担当の教授
上の問題で座標変換をするとき、M>0、K≧0 を仮定したけど、K が準正定行列でないときはどうするか?、また K が対称行列にならないマス-ばねシステムの例を図示せよ、との追加質問。これはメインじゃなかったし1分考えてわからなかったので即白旗。どうやるんだろ?メインの問題は、そもそも Adaptive Systems とは何かに始まり、微分方程式の解の存在性・一意性の十分条件、必要十分条件(Lipschitz Continuity)、stability と attractivity の厳密な定義、persistent excitation やリアプノフ関数に関してなど、Adaptive Systems の授業導入部分中心。期末試験でたくさん書いて完璧な図も描いたのに、数式が厳密性に欠けるとのことで、20点中たったの2点しかもらえなかった stability と attractivity の定義を自信を持って説明できたのでちょっと嬉しかった。



最初のアドバイザーからの問題で少し詰まったけど、それ以降は大きな問題もなく順調に切り抜けられたのが良かった。4人目の他分野の教授が一般的な常識問題みたいのを出すかと思ったけど、ずっと座ってただけで一言も話さなかった。ただの監視係だったのかな。Introduction to Robotics 担当教授が同席してなかったので、一番メインのはずのロボット工学はほとんど出なかったけど、あの教授はなぜか群論(Group Theory)に関する問題が好きらしい。

さて、多分一番みなさんが興味があるのは、「一体この試験をパスするのはどれくらい難しいのか?」だと思う。これも学校・専攻によって大きく違うと思う。情け容赦なしに結構ばっさり切るところもあると聞く。ウチのロボティクス分野の場合、審査は結構甘いのでは、という印象を受けた。ドロップアウトしたという話は滅多に聞かないし、大抵みんな一発で通る(一般的に2回チャンスがあるそうだ)。専攻の規模が小さい(同級生は約15人なので、ロボティクスだと5人程度)のもこの甘さに関係あるのかもしれない。でもこの試験準備をする過程で、あんなに頑張って勉強したことをすっかり忘れていたのに気付いたり、見直すことで新たな発見があったりして基礎固めになるという点で、しっかり復習して良かったなと思う。あと、しっかりとした手応えを自分で感じ取れたことが嬉しかった(ラボに戻ったら、結果発表前なのに you look happy と言われた)。次の関門試験は、約1年後にある GBO(Graduate Board Oral Exam)というコースワークと研究に関する2時間の口頭試問(一般的には Comprehensive Exam、通称コンプと呼ぶと思う)。まだまだ学位までの道のりは長い。

● 関連
MIT EECS の Qualifying Exam ←さすが MIT、成績の条件が相当厳しい。

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