アウシュヴィッツ訪問記

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Candles for Peace at Auschwitz II-Birkenau

Bombed Gas Chamber

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the way it used to be...

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初めてアウシュヴィッツの名を聞いたのは、きっと学校の歴史の授業だと思う。はっきりとは覚えてない。はっきり覚えてるのは、留学前の2003〜2004年に放映された白い巨塔を見て、思い出したかのように本や映画を見始めたこと。でも渡米後、この熱はパタッと止んでしまった。新しい生活を始めたこともあって、一気にほとぼりが醒めたような状態になってしまった。数年が経過し、アウシュヴィッツに再び心が向くようになったのは、今年の夏の研究留学が決まったとき。せっかくドイツへ行くのだから、お隣ポーランドにあるアウシュヴィッツにはぜひ足を伸ばしたいと思った。

とは言え、ヨーロッパ内の航空券が安い中、ミュンヘンからアウシュヴィッツ最寄りのポーランド・クラクフへの航空券は他と比べると高かった。気が付けば8月に入り、ミュンヘン滞在も残り1ヶ月。毎週水曜に売り出されるルフトハンザの格安航空券で、ミュンヘンからロンドン・ブリュッセル・プラハへの往復88€チケットを見つけた。今度の週末はどこへ遊びに行こうかと迷っていたとき、まだ見ぬアウシュヴィッツの地が気になって仕方なかった。そして気が付いたら、クラクフ行きのチケットを買っていた。


8月10日金曜早朝、ポーランドはクラクフへ降り立った。アウシュヴィッツはドイツ語名で、ポーランド語名ではオシフィエンチム(Oświęcim)というそうだ。もちろんアウシュヴィッツと言えば通じるけど、ポーランド人はそう呼ぶのを好まないらしい。

空港からオシフィエンチムに行くには、バスか電車でクラクフ中央駅(Kraków Główny)まで移動し、中央駅裏のバスターミナルからバスか電車で行く。空港から中央駅までは約20分、中央駅からオシフィエンチムまでは約1時間半。ちなみにオシフィエンチムへ行くには、バスの方が30分毎くらいに出て本数が多いし、直接ポーランド国立オシフィエンチム博物館(以下、博物館)前に到着するので、電車よりバスの方がアクセスはいいと思う。

ちょっと調べればわかるけど、博物館には唯一の日本人公式ガイドの中谷剛さん(メールを送る際は、_AT_ を @ に、_DOT_ を . に書き換えて下さい)が働いている。本当に行く直前に連絡を取ったけど、運良く金曜午後は空いているとのことだったので、案内をお願いした。予約を確保したければ、少なくとも2週間前に連絡した方が良い、と博物館のウェブサイトには書かれている。

空港から中央駅経由で直接行ったので、博物館には11時頃に着いた。駐車場には団体用のバスがずらっと並び、インフォメーションセンターには多くの人が溢れ返っていた。別にみんな騒いだりはしゃいだりはしていないけど、それでも予想していたのとは違う雰囲気だった。インフォメーションセンター内で日本語のガイドブックを購入し、11時半から英語で上映されていた短編記録映画を鑑賞。20分程度だと思う。中谷さんのツアーにはこの記録映画は含まれていないと思うので、案内の前後に個別に見ることをお勧めします。英語がわからなくても、映像を見るだけでもある程度わかるし、雰囲気が十分伝わる。

ガイドブックと記録映画はほんの少しだけお金が掛かるけど、博物館自体は入場無料。後から中谷さんに伺ったけど、これは多くのユダヤ人にとってはお墓参りだからだそうだ。実際、至る所でユダヤ人の団体を見掛け、追悼の儀式を行っていた。ただし無料の代わり、全部でアウシュヴィッツに3つあった強制収容所のうち、維持費の関係から第三アウシュヴィッツ(モノヴィッツ収容所)は取り壊されたとのこと。一般的に知られているのが第一アウシュヴィッツ(アウシュヴィッツ収容所)、第二が電車の終着点&ガス室が有名なビルケナウ収容所。規模で言えば、第一は28棟のバラックがあるのに対して、第二には300棟を超えるバラックがあったそうだ。

記録映画を見た後、近くのレストランで昼食を済ませた。それでも集合まで時間が余っていたため、第一場内を少し歩き回ってみた。ダッハウ強制収容所に行ったときも感じたけど、晴れていたこともあり、ここで60年前に大量虐殺が行われたとは到底考えられなかった。そしてダッハウと同じように、ポプラ並木があった。戦後に追悼の意を込めて植林されたかと思っていたけど、少なくともアウシュヴィッツでは、当時囚人に植えさせたそうだ。

いくつかのバラック内は展示場になっており、当時の囚人から奪った衣服、かばん、靴に始まり、切り取られた髪の毛の山まであった。没収された一部のみだけど、それでもとてつもない数が展示されていた。数字よりも、実際に見た方が遥かに圧倒される。でも、不思議と全く実感が湧かず、自分とはほど遠い世界に感じてしまった。中谷さんのツアーが始まっても、なんだか全然ピンと来なかった。ツアー同行者に家族連れ(<注> 中谷さんのガイドを希望する場合、対象年齢は14〜15歳以上とのことです)の方がいて、中谷さんが小さな子供にもわかりやすく説明していたというのもあったと思うけど、なんだか別世界のこととしか感じられなかった。現実離れし過ぎていて、逆に理解できなかったのかもしれない。

それが少し変わったのが、アウシュヴィッツからビルケナウへ移動した後。アウシュヴィッツは博物館として作り替えている部分があるのに対して、ビルケナウは極力手を加えないようにしているそうだ。昔の姿をありのままに残すことで、より当時の雰囲気を知ってもらうためだろう。ビルケナウはとにかく広大だった。その面積は1.75平方キロメートル(約53万坪)、東京ドームで約37.4個分。これも数字ではなかなかピンと来ない。実際、時間の制約で敷地の約1/3弱しか歩けなかったけど、それでなんとなく大きさを想像できた。そんなに大きいのにも関わらず、ビルケナウは未完成だったそうだ。

アウシュヴィッツのバラックと比べると、ビルケナウのそれは明らかに粗末な造りだった。最初はレンガ造りだったのが、時間と工費節約のため、途中からは木造バラックになった。その一方、バラックに収容できないくらい多くの囚人が運び込まれたため、多いときにはあの死の門をくぐって汽車を降りた約75%の人がそのままガス室送りになったそうだ。ビルケナウのバラックに入ると、まるで時間が止まっているかのように感じられた。

中谷さんのガイドは、事前に他の参加者の感想で読んでいた通り、淡々とした口調で客観的な視野で語られる。最初から最後までひたすら語り続けるスタイルではなく、これを見てあなたはどう感じるか、なんでこんなことが実際に起きたのか、同じ過ちを繰り返さないために我々はどうするべきなのか、そういうことを考える機会を与えてくれる。普段なかなかできないことだからこそ、少なくとも見学中は深く考えるべきなんだろう。

今回アウシュヴィッツを訪れたいと思ったもう一つの理由に、昨年末に隣の研究室のユダヤ人友達が発した一言があった。何らかの弾みで戦争の話に夢中になっていた彼は、「日本人もナチスも一緒だよ」と言ったのだ。彼は私がいることに気付いていなかったし、何気ない会話の中から出た一言だった。でも、だからこそとても気になったし、余計に深く考えた。

今年の正月、靖国神社の遊就館や鹿児島・知覧にある知覧特攻平和会館を訪れた。ミュンヘンに来てからは、ダッハウ強制収容所、ニュルンベルクにあるナチス党大会会場、そしてアウシュヴィッツを訪れたけれど、それでもなぜ日本やドイツがあのような狂気の沙汰に傾倒していったのか、まだよくわからない。どうすれば、このような悲劇が二度と起こらないようになるのか、それも明確にはわからない。ただ、アウシュヴィッツを訪れたことで、また中谷さんのツアーに参加したことで、改めてそういうことを考える機会が得られた。そういう意味で、アウシュヴィッツまで実際に足を運び、真剣に考えることは非常に価値があると思う。

博物館を訪れる人は年間約100万人にのぼるそうだけど、日本人訪問者は7,000人くらい、つまり全体の0.7%ほどにしか満たない。確かにわざわざ日本から高いお金を払って、バカンスとは程遠い地を訪れるのは気が引ける。ヨーロッパにはもっと見どころがたくさんあるし、実際のところ、自分もミュンヘンに滞在していなかったら、わざわざアメリカ・日本から訪れようとはしなかっただろう。でも、何かのきっかけで近くへ行くチャンスがあれば、ぜひ訪れてみて欲しい。実際に行って、見て、感じて、そして考える機会を得て欲しい。そうすることで、これからの明るい未来を築くヒントが得られればと思う。

ちなみに個人的なお勧めとしては、午前中にガイドの案内で一通り見て回った後、午後に改めてじっくり見るのがいいと思う。展示されている資料に目を通そうと思うと、かなり時間が必要だと思う。あと、最寄りの都市クラクフは日本で言えば京都みたいなところ、ポーランドの古都である。やっぱりアウシュヴィッツだけじゃもったいないので、クラクフの素敵な中世の雰囲気や、近くの世界遺産・ヴィエリチカ岩塩坑とかもぜひ楽しんで下さい。

● 参考
- 国立オシフィエンチム博物館公式ウェブサイト
- アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所
- アウシュビッツ徹底ガイド
- クラクフ中央駅からオシフィエンチムまでの電車時刻表
- 中谷さんから頂いたクラクフーオシフィエンチム間の移動方法(PDFファイル)
- 中谷さんの著作2冊:

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● 旅行の写真
- 国立オシフィエンチム博物館
- ヴィエリチカ岩塩坑
- クラクフ

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