ルークアーム:最先端のロボット義腕

既に出遅れてしまって、この件に関して書かれてる記事が多いけど。。まずは能書きよりも、こちらの映像からご覧下さい。

これは以前にも少し触れた、DARPA(アメリカ国防総省の防衛高等研究計画局)が出資するロボット義腕開発プロジェクトの研究成果の一つ。下で紹介している記事によれば、大きなチームが2つあって、ケーメン氏の DEKA という会社が2年間のプロジェクト、ジョンズ・ホプキンスの応用物理研究所 (APL: Applied Physics Laboratory) は4年間のプロジェクトとして発足したそうだ。お互いに別々のアプローチを取っており、DEKA が2年間のプロジェクトを終えて発表したのが、今回掲載されている通称『ルークアーム』。おおまかな解説に関しては、こちらを参考にして下さい。

- Engadget Japanese:セグウェイの発明家が開発するロボット義手「ルークアーム」
- Robot.Mとの優雅な平日:ロボットニュース【セグウェイの発明家が開発するロボット義手「ルークアーム」】

より詳しく知りたい方は、ieee spectrum の記事 "Dean Kamen's "Luke Arm" Prosthesis Readies for Clinical Trials" を読んでみて下さい。


ケーメン氏のグループは、以前触れたような頭にチップを埋め込む方法ではなく、胸筋からの筋電位を測定している。頭にチップを埋め込むよりは安全そうに見えるけど、それでも今回の手法もやっぱり手術が必要。人間の神経網は上部脊髄から肩を通り越えて、脇の下、そして腕へと繋がっているそうだ。今回の被験者は脇の下の神経が胸筋と繋がるように手術したとのこと。だから、脳からの信号を直接読み取る代わりに、胸筋からの微量な電位を測定して、腕がどんな動きをしたいのかの命令をロボット義腕に送っている。ちなみにこの執刀医が所属する Rehabilitation Institute of Chicago はおそらく全米一の規模のリハビリセンターで、リハビリ関連のロボット研究が、シカゴにあるノースウェスタン大学などで盛んに行われている。

動画から、脳からの信号を出力する方はかなりよくできているのがわかる。では、脳に戻ってくる信号の方はどうだろうか。ロボットハンドで難しいのは、固いものでも柔らかいものでも両方掴めること。そのためには掴んでいるモノからの力のフィードバック、つまり、いま自分がどれくらいの力で物体を握っているのかを知る必要がある。これが脳に戻ってくる信号という意味。これが十分でないと、最初にコップを掴んで、次にブドウの一粒を掴む、といったような動作は難しい。動画でも説明されているけど、この研究チームがとった手法は、直接力のフィードバックをするわけではなく、代替え手段によるフィードバック。小さな振動センサを腹部に取り付け、出力している力の大きさによって振動の周期を変えている。だから、実際に重い・軽い、固い・柔らかいといった情報までは正確にはフィードバックされていない。でも本物の感覚フィードバックの代わりに、違った形でのフィードバックを使うというのはよくあることで、例えば自分の研究グループだと、実際に遠隔操作手術ロボットに力のフィードバックを実装する代わりに、力情報をディスプレイに表示して視覚情報として伝達する方法が試されている(力フィードバックを実装するとロボットの安定性が問題になるけど、視覚情報を追加するのはシステムの安定性には影響ない)。

手触り感の実装や空間認知能力(例えば両手を背中の裏に回しても、どこに自分の手があるかが大雑把にわかるため、手を繋ぐことができる)のフィードバックなど、ハプティクスと脳神経科学間での問題が山積してるように見える。でも正直なところ、たったの2年間でこんな高性能なロボット義腕ができるとは思わなかったので、APL を中心としたグループがあと2年後までにどんな結果を出すのか楽しみだ。

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2 Comments

DEKAのKamen氏の義手の研究、だいぶ進まれているのですね。前職の頃、仕事で関わりがあり、義手などの研究開発に関しても内部資料で拝見したのですが、その頃(4年ぐらい前)に伺ったものからするとかなりの進歩で驚きです。なかなか実臨床への応用、商業的な成功となると難しい点も多いのでしょうが、ビジネスの点からもとても興味深いです。
いつもお会いすると私がくだらない話をしてばかりで申し訳ないのですが、今度機会があったら、山本さんの研究のお話ももっとお伺いしてみたいなと思っています。

なんだか思わぬ繋がりがあるようですね。自分は義手プロジェクトには関わってないんですが、でもかなり面白そうなプロジェクトですよね。DEKA が2年であそこまで仕上げたってことにかなりの衝撃です。

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