今シーズンでちょうど40周年を迎える Shriver Hall Concert Series, それを祝って金~日曜の3日間、 PianoCelebration が開催された。レクチャーあり、ピアノ演奏会あり、さらには初めてジャズピアニストも迎えたり、まさにピアノ三昧の3日間。レクチャーにはあまり興味がないのでピアノコンサートを聴きに行こうと思ったら、ピアニストは5人。誰がいいか全然わからなかったので、ホプキンスの Peabody Institute(ピーボディー音楽院)でピアノを専攻している友人に訊いておすすめの二人を教えてもらった。
まず最初は金曜夜の8時から。金曜午前中にアドバイザーとミーティングがあって、その準備で少し寝不足だったので開演前までちょっと研究室で15分仮眠、・・・のつもりが気付いたら8:10!あろうことか、最初の曲目を逃してしまった。。。 そのトップバッターは、
Krystian Zimerman(クリスティアン・ツィマーマン、もしくはツィメルマン). 史上最年少の18歳で1975年のショパンコンクール優勝を果たしたポーランド人。世界各地のコンサートに自らのピアノを持ち歩いたり、質を保つためコンサートの回数を制限したり、音に対する飽くなき追求心を持つ超有名人だそうだけど、全然知らなかった。ベートーベンの悲愴ソナタをとても情緒豊かに弾きこなし、ショパンのバラード第4番でさらに観客を引き込み、最後の現代音楽ではまさに超絶技巧を披露。演奏終了後、観客のスタンディングオベーションは鳴り止まず、彼が4度目の舞台裏からの登場で、もう夜10時過ぎで遅いから早く帰って寝てください、というジェスチャーを繰り出してようやく終了。とにかく大満足の一言。最初のモーツァルトのソナタ(K.330)を逃したのが本当にもったいない。
こんなすごい演奏だったにも関わらず、全くお金を払ってない。というのも、夕方6時半から当日割引(rush ticket)販売とのことで行ってみたら、受け付けのおばちゃんに「ホプキンスの学生?」と尋ねられた。そうだと答えると、じゃああげる、とタダでチケットをもらってしまった。本当にいいの?と念押ししても、「ホプキンスの学生なら無料だからいいのよ」と。以前のコンサートは払ってるからおかしいなぁと思いつつも、翌日(土曜)の当日割引はいつ販売開始か尋ねたら、なんと金曜夜にして土曜夜の当日割引まで、しかも無料でもらってしまった。
そんなわけで、当初は二人のコンサートだけの予定だったけど、無料ならってことで土曜午後のコンサートも行くことに決定。ところがチケットを買う際、「学部生、それとも大学院生?」と訊かれる。どうやらホプキンスの学部生は無料だったようで、院生は当日割引$17(土曜午後の回は$8)払う必要があったらしい。金曜夜にチケットをタダでくれたおばちゃんは、学生はみんな無料と勘違いしてたのか、それとも自分が見た目で学部生と判断されたのか。。
土曜午後は
Kit Armstrong(キット・アームストロング) という、弱冠14歳のピアニスト兼作曲家。数学や言語の才能もあるそうで、7歳のとき、高校に通いながらカリフォルニアにある Chapman University に奨学金付きで part-time の学生として通い始めたそうだ。いま現在は、ロンドンにある Royal Academy of Music と Imperial College に通っている、まさに神童。さて、開幕して登場したのは年齢よりさらに幼く(10歳くらい?)見える男の子。まるで小さなピアノ教室の発表会で演奏する小学生。ところが一度ピアノを弾きだすとまさに別人。小さいながらも、繊細なピアニシモも迫力のあるフォルテシモも良かった。多少演奏ミスが目立ったのが残念だったけど。最後のアンコールに、客席にいる先生へのお礼と言って弾いた曲がとても良かったけど、残念ながら曲名わからず。
そしてこの日二度目のコンサートは夜8時から
Leon Fleisher(レオン・フライシャー). 今年7月で78歳になる、現役のピーボディーの先生だそうだ。彼はアメリカ人で初めて世界的なコンクールにて優勝を果たすものの、1965年絶頂期の37歳のとき、突然原因不明のまま右手の2本の指が動かなくなり、ピアニストとして『引退』せざるを得なくなった。ところがその後は指揮者・音楽教師として活躍し始め、また左手のピアニストとしても活動を続け、いつか両手で弾ける日が来ることを決して諦めなかったそうだ。そして1995年、その右手が練習過多のためにジストニア(筋失調症)という神経障害を患っていたことが判明し、ボトックス療法という治療法で見事に復活。2004年冬、初めて『両手』で弾いたアルバム、
トゥー・ハンズを発売。そんな感動的な話はすべてコンサート中~終了後にかけて知ったんだけど、体格に似合わずとても優しい音を奏でるなぁという印象を受けた。治療法で完璧に右手が蘇ったわけではないだろうし、77歳という年齢を考慮すればとっくにピークは過ぎてしまっていると思うけど、ベテランだからこそ放つ巧さを感じた。最後のシューベルトのソナタ(D.960)はそんな不安も感じさせない迫力溢れる素晴らしい演奏で、この日もスタンディングオベーションが鳴り止まなかったけど、その後のアンコールはなし。というのも、開演後いきなり、「最後は(シューベルトのソナタで)盛り上がって終わりたいんだ」と切り出し、自身69年間のピアニスト生活で初めてという、アンコールでコンサートを始めたため。個人的には一番最初のアンコール曲、バッハ作曲/ペトリ編曲・
羊は安らかに草をはみ(WMA)、がとっても気に入って初めて iTunes でクラシックを買ってしまった。イージーリスニング(いわゆる癒し系音楽)が好きな方にはおすすめです。
さすがに週明けにテストを控えて3日連続は辛いので今日はやめたけど、ちょうど節目の年に巡りあえてラッキーだった。ちなみに本来なら3つで計$42(学割+当日割)のところ$8しか払ってないけど、$42だったとしても今年日本で開催されるツィマーマンのコンサートより安い。これだから学生はやめられない!?
● 参考
レオン・フライシャーが語る
JHU GAZETTE: Three Days of Nonstop Piano Performances